こるりうちゅう

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その3:アンディニールズチューニングスクール2012

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ワークショップは最初と最後の1日と、平日の夜作業する、合計で1週間の予定になっていました。大急ぎで作業を進めてしまったために時間が余ってしまい、せっかく参加している生徒さんに少しでもメリットになるよう、残りの平日はテナーパンの調律を実践で学んでもらう講座に切り替えました。

最初にホワイトボードを使って簡単な理論の説明。打面の楕円形を描いて、真ん中に基音、長編にオクターブ、短編に倍音が響くように配置するのだそうです。アンディはすべての種類のパンで基音に対して倍音は5度にチューニングするのだそうですが、短3度がいちばん簡単に作れるらしく、長3度にしてあるものもあり、それもチューナーさんによって様々なのだそうです。

そしていよいよ実践でテナーパンにハンマーを入れていきます(ドキドキ)比較的チューニングしやすい、テナーパンの3じゅうマルの真ん中の1周を、ぐるっとチューニングしていきます。まず調律する音にチューニングメーターのダイアルをセットして、音盤をスティックで叩いて音を出してみます。チューニングメーターがどちらに回転しているかで音の高い低いを見極めて、それを修復するように打面を叩いていきます。上からハンマーを入れるときは垂直に振り下ろさず、斜めからかするように、チンピラがイチャモンをつけてくるときに、肩をぶつけてくるみたいに(笑)打つ。そう説明しながらアンディがチンピラになってイチャモンの実践もしてくれました(笑)

ハンマーを入れる前に、生徒さんが自分で今の状況を判断して、今からする対処方法を宣言します。その方針をアンディ先生と答え合わせをしてから作業開始です。とりあえずザクザクザクと作業を進めようとするヒトや、恐る恐るでなかなか音を変化させるほどしっかり叩けないヒトなど、はじめての作業でも個性は様々。それに対してアンディは、男子に厳しく不機嫌にあーダメだダメだ、あーだこーだとか言ってるのに、オンナのコにはちょう甘いんです!!!(笑)どっちがいいんだか悪いんだかわかりませんが…^_^;。

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傍で通訳しながら見学していて思ったのですが、もっと直感的な作業をしているのかと思いきや、チューニングメーターをガン見して物理的な音の反応を見つつ、けっこう論理的に作業は進められてるんだなーとゆう印象です。それでも自分の生の耳で聴くことがとても大切なのだそうで、とくに低音は、音の焦点をピタッとあわせて聴き分けるのがとても難しいそうです。

生徒さんがチューニングして、アンディがまたわざと音を狂わせて、次の生徒さんが挑戦して…とうゆ方法で1台のテナーパンをシェアして練習が続けられました。テナーパンの打面をハンマーで叩くなんて、プレイヤーのわたしたちにとっては絶対にしてはいけないこと、ふだんは禁止されてる危険な作業でもあるわけで、そんな危険な作業を専門家の立会いのもとにドギマギしながら、しかも本物のスティールパンを使って挑戦できるなんて、チューナーを目指してるわけじゃない普通のプレイヤーにとっても貴重で有意義な経験なんじゃないかなと思います。なにより、自分たちが演奏してるこの楽器が、物理的にどんな風にできてるのかをより深く理解するチャンスになるはず。もし機会があればこの講座を、ひとつの一般向けコンテンツとして続けていければいいのになぁと思いました。

そしてそ最後に、制作した6ベースを楽器らしく調律するファインチューニングの作業を、アンディの説明と質問などを交えながら見学しました。この行程は、当たり前なのかもしれないけれど、一切触らせてもらえません。こうやって責任を持ってスティールパンが作れるようになるには、100台くらい!試作品を作らないといけないそうです。気が遠くなるようなハナシですが、トリニダードでチューニングを目指す少年たちはみんなそうして来たのでしょう。かつて少年だったおじさんアンディも。

ファインチューニングをする前も、いちおう音階のようなものはあるんです。でも、叩いてみてもゴーンっていういかにもドラム缶的な音しか出ません。けれど、テナーパンのチューニングで学んだのとほぼ同じ原理で、打面に基音とオクターブと倍音をそれぞれ響かせるように音の高さを調整すると、みるみる楽器らしい音色に変貌していきます。これはもう、わたしが見てるかぎりは魔法にしか見えません!!そんな魔法な工程を経て出来上がったベースが↓コレです!アンディ自身に試奏してもらいました。(夜遅かったのでちょっと控えめ)

わたしが試奏させてもらったムービー↓

ちゃんとした工場で作業するのでもないし、もらったドラム缶が楽器に向いているかどうかもわからない、しかも基礎的な作業をしたのはワークショップに参加している素人の生徒さんなわけだし、きっとがんばっても"とりあえずできてるかんじ"の楽器が精いっぱいなのかなーと、ワークショップを始める前まで思っていたのですが、

でも、結果はまったく違っていました。予想以上に素晴らしすぎる!!!こんなにスウィートでパワフルで地に足着いた音色のベースが誕生するなんて思ってもみない成果でした。こんなミラクルなことが起こるなんて、今まで夢見ていた想いの結晶がだったのかもしれません。この楽器を無駄にしたくない、ぜひ、この楽器を活躍させてあげたい! そう、完成したときに強く思いました。

…つづく、5回シリーズです。(たぶん)