こるりうちゅう

こるりん べるりん こるりうちゅう むちゅう♪ ばんちょう やおちょう すてぃーるぱん ピザぱん♪

レインノラマ

みなさんもうすでにご存知かとは思いますが、今年のKOBEスティールパンカーニバルは台風18号の接近によりイベントの途中で中断、そのまま中止になってしまいました。

演奏ができたバンドは11時〜12時までにエントリーしていたバンドだけ。それ以降の富山から来ていたスキヤキスティールオーケストラも、鹿児島のラントアンドレイブも、もちろんわたしたちパンプルも演奏できませんでした。

伝説的晴れ女のわたしは、奇跡的に台風の進路がそれることを信じていましたが、水害の多かった今年の夏の龍の神様の意向には逆らえなない、そんな気持ちも心の底で感じていました。今、みんなで味わわなければならない悔しさと謙虚さを。

イベントが中断のまま中止になることを伝えなくてはいけなかった司会のけいちゃんも辛かったと思います。でも、すべてのバンド名をひと言コメントと共に華々しく紹介してくれて、それだけでもみんな少し気持ちは救われたと思います。

大雨の中、大急ぎで撤収作業が行われていましたが、わたしは楽器を片付ける気にもなりませんでした。いつもの松林に陣取られたパンプル基地に並べられたわたしたちの楽器をびしょ濡れでほったらかしにしながら、各バンドのメンバーと残念な思いをねぎらいながらダラダラ…

ステージ上の撤収作業がほぼ終わりかけの頃、ふと、ほんの少しだけ雨あしが弱まったんです。完全に止んだわけではありませんでしたが、まだ立っていられるほどパラパラまばらなかんじになって、少しだけ空に明るさを感じました。

「雨、止んできた!もう、演奏しちゃう?」そう閃いた瞬間にもう口にしてた。そしてパンプルのメンバーにもやる気が導火線みたいに伝染していくのが感じられて、1分くらいでゲリラを決断(笑)バラバラになってたメンバーに招集をかけて松林で演奏することにしたのです。

わたしたちがパンカニのために用意したのは3曲とオマケの1曲でした。「何やる?1曲だけ?ぜんぶやる?」…わたしの問いかけにメンバーの気持ちはせっかくなんだからどうせ雨降ってるし時間もあるし全曲でしょう!とゆう雰囲気。わたしたちを取り囲む、パンカニ中断を惜しむ全国のパンマンたちに見守られながらゲリラライブを決行したのです。

演奏は予想以上に困難で、雨に濡れたパンの打面にゴムのスティックはツルツルすべっていつも以上にミスノートは連発するし、ボウル状の打面にどんどん水たまりができて、物理で音の鳴るしくみを思えば当然なんだけど、水がたまった部分だけ音の高さが狂って聞こえるんです。だからちゃんと間違いなく叩いたはずなのにチューニングが狂ったみたいな音が出てそれだけでキモチが怯んだり…、だけど、そんな未経験な状況にあたふたしながらも演奏は止まることなく、みんなの気合いはまっすぐにゴールを目指して3曲+オマケの1曲も叩ききりました!

雨あしがどんどん強まる中でも傘をさしながら演奏を聴いていてくれる、全国のパンカニを愛するパンマンが応援してくれていたからこそ、わたしたちもやり遂げられたんだと思う。ここで聴いていてくれたみんなも、今日パンカニで演奏したくて全国からはるばる集まってくれたひとたちばかりだったから、みんなの分もわたしたちは音を出さなくちゃってこと、何も言わなくてもパンプルのメンバーは共有していたんだと思う。今年の松林でのゲリラ演奏は、そんな特別な経験をわたしたちに与えてくれました。

このあと、いろんなひとからたくさんの感想をいただきました。あのとき演奏してくれてありがとう!とかモヤモヤした気持ちが救われたよ、とか、遠くでまだ撤収作業を続けていて遠くからわたしたちの演奏を聴いていた方々からも、あのときあのタイミングで演奏してくれてほんとうによかった、とか…

もしかしたらもう少しネガティブなことも起こりえるんじゃないかなとゆう恐れもゲリラを決行する前にはチラッとあたまを過ぎりましたが、ぜんぜんそんなことはありませんでした。いろんなひとのいろんなキモチが、わたしたちパンプルの演奏に託されていたんだってことを、あとで改めて知ることになったのです。

いちばん印象的なのは「リアル"レインノラマ"だったね〜」って声をかけられたこと。"レインノラマ"とゆうのは、僕のパンに雨粒が落ちて…♪みたいな歌詞の古いカリプソの名曲。実際はレインノラマみたいなかわいい雨じゃなくて豪雨だったけど、トリニダードで語りつがれるパンが生まれたエピソードにも雨粒が出てくるし、ベコボコしたドラム缶に雨粒が落ちる音色のひとつひとつ音階が違うことから発明されたスティールパンが、めぐりめぐって今や極東のわたしたちの喜びにもつながってるんだってことをふと思い出しました。

このエピソードはじつはトリニダードのロマンチックおやじたちがギャルを口説くために捏造した作り話(笑)なだけだけど、もしこれがほんとの話なら、雨が降らなかっらこの世界にスティールパンはなかったかもしれないし、雨を恨まず、どんなときもわたしたちは音楽で心をトリートメントできるってことを教えてくれた貴重な経験を忘れずに、また来年、青空の下で思いっきり演奏できるあたりまえの貴重さも忘れずにいたいなと思いました。

今年、お届けできるパンカニの動画はこれだけ↑雨の中、撮影ありがとう。マリオ、ヒゲまで作って帽子も揃えて、練習もいっぱいして、ほんと残念(;_;)リベンジしたいなー…