こるりうちゅう

こるりん べるりん こるりうちゅう むちゅう♪ ばんちょう やおちょう すてぃーるぱん ピザぱん♪

逆サンドイッチ問題

1344835796483.jpg

こないだ行ったワンハーツのライブで配られていた姫路のスティールバンドのメンバー募集チラシ。

バンド名は、PUNCH-OUT STEEL ORCHESTRA = パンチアウトティールオーケストラ、だけど、

団員募集の下のところには『姫路のスチールパンバンド』の文字が…。

バンド名は『スティールオーケストラ』と正しい表記になっているのに、なぜかサブタイトルのところだけは『スチール"パン"バンド』とパンを挟み込んでいる日本独特の表記、いわゆる"逆サンドイッチ"状態になっているのです。

そもそも、スティールバンドってバンドや音楽のジャンル名なので、こうゆう説明文のところこそスティールバンドって書いてあるほうが自然なのに、日本ではそうはいかないようです。

なぜか…、

最近ようやく教えていただいたのですが、スティール"パン"バンドやスティール"パン"オーケストラと、パンを挟む逆サンドイッチ表記は、日本人が検索エンジンにヒットさせるために考え出した和製英語なのだそうです。

日本人は"スティールパン"と検索することが多くて、こうやって逆サンドイッチにすることで、検索エンジンに引っかかりやすくなる。検索ワードにスティールパンと入れておくだけではなく、バンド名そのものを逆サンドイッチ表記するだけで、更に検索にヒットしやすくなり、ビジネスがやりやすくなるそうです。

けれどこれは和製英語なので、日本だけの呼び名でしかありません。トリニダードでも、ニューヨークやイギリスなどのスティールバンドが盛んな国でも、スティールパンとドラムやパーカッションだけで構成されているこうゆうバンドはどこへ行っても"スティールバンド"または"スティールオーケストラ"です。

パノラマの会場で『スティール"パン"オーケストラ』とバンド名が紹介されているのなんて聞いたことがありません。それを聞き慣れているわたしは、日本で逆サンドイッチを耳にするたびに、爪の先が千切れるくらい恥ずかしくなります(>_<) 日本人だけが間違ってるなんて…。この恥ずかしさや違和感は現地に行ったことがないと決して味わえない感覚かもしれません。

おそらく日本のバンドも、とくに海外のパンカルチャーの洗練を受けたヒトが帰国後に結成したバンドはこのことを知っていて、バンド名だけは正しくSTEEL BANDやSTEEL ORCHESTRA にしているのかもしれません。でもカタカナで書くときはビジネス的にもわかりやすさ的にも"スティール"パン"バンド"と書かざるを得ないのかもしれない。

ですが、他国の文化で親しまれている呼び名を、しかもその恩恵を充分に受けているパンに関わる日本人が、勝手にお金や無知のために変えてしまって良いのでしょうか?

情報が乏しかったために勘違いしてしまっているのならまだしも、間違っているとわかっていながらなぜ間違い続けるのでしょうか?日本人がまだ知らなければ、文化を受け継ぐわたしたちが紹介して浸透させればいいのです。この楽器がスティールパンとゆう名前であることすら、何年か前の日本人は知らずにいたのですから。

いったん間違って浸透してしまうと、日本人はそのまま使い続けてしまう傾向にあるようです。かつて、ブラジルのタンバリンであるパンデイロはパンディエロと間違って表記されることが多かったんですが、今では訂正されて見かけなくなりました。でも、アフリカの打楽器ジェンベ(ジンベ)は、未だにジャンベって呼ばれることのほうが多い気がします。ジェンベorジャンベは、スチールパンorスティールパンとゆう発音の違いでしかないので、許させる範囲なのかもしれませんが、ほんとは違うってことを知ってしまうとその扱われ方がとても気になります。

ちなみにスチールパンかスティールパンかどちらかと言えば、発音的にはスティールパンのほうが近いです。TEEはCH=チとは発音しない。なぜスチールパンと日本語で表記させるかとゆうと、日本語で鉄=スチールとカタカナ表記させるので、意味重視の訳し方になっているのだと思います。(中国語みたいですね!)いずれにしても英語のカタカナ表記には限界があります(>_<) STEELをスティールと発音するかとゆうと、”ル”じゃない気がするんですが、スティールがいちばん近づける日本語の限界だと思います。

スティールパンも、昔はアメリカで販売されるための呼び名であった”スティールドラム”とゆう名前で日本でも呼ばれていたことがありますが、わたしのまわりではもうだれもスティールドラムとは呼んではいません。唯一、何十年も前に生まれたMIDI音源の企画の中に化石のように残っているのみではないでしょうか。

ティールドラム→スティールパンに変化していったのは、正しい呼び名だったからではなく、スティールパンのほうがイメージがステキだったからじゃないかなと、この十数年、日本のパンシーンを振り返ってみて感じます。きっと日本人は正しさよりもイメージに弱いのでしょう。

これも最近はじめて知ったのですが、"フラダンス"も間違った表記、和製英語なのだそうです。ハワイの言葉でフラ=ダンスの意味なので、フラダンスはダンスダンス(笑)とゆうへんな言葉、"サルサソース"とか"チーズフロマージュ"とかとおんなじような状態のまんま日本に浸透してしまっているようです。フラダンスが広まったのは日本にインターネットもないイングリッシュスピーカーも今より格段に少ない昭和の時代だったからいたしかたなかったのかもしれません。

けれど、これだけ広まってしまってもフラダンスとゆう言葉は間違いで、フラと呼びましょう、フラダンス教室ではなくてフラ教室です。と、紹介しているフラの先生もたいさんいらっしゃっることを知りました。フラ教室とフラダンス教室とでは、感じるイメージが違うような気がします。フラダンス教室は近所の公民館でおばあちゃんが元気に集まって踊ってはるみたいな(笑)イメージで、フラ教室と聞くと…、ダンスだけではなくハワイアンスピリットを大切にして生き方まで紹介したり学べたりするところ…みたいなステキなイメージ。

そうか、いったん間違った呼び名がもし日本に浸透してしまっても、日本ではそれを逆手に取って差別化に使えるのかもしれない。スティール"パン"バンドはパンをただ楽器としてだけ扱っている音楽団体で、スティールバンドは、リズムやアレンジなどの音楽スタイルも、パンをとりまく文化も、パンが生まれた国トリニダード・トバゴへのリスペクトも大切にする団体、とゆう位置づけができたらいいんじゃないかなって思ったのです。

そうすれば、パンカルチャーのすごさに気づいたヒトから、あ、やっぱりうちもスティールバンドかな?って変化してきたり、これから新しくバンドをはじめる若い世代が、わたしのバンドはスティール"パン"バンドじゃなくてスティールバンドなの!と、選んでくれるヒトも出てくるかもしれない。そしたらわたしがなんだかんだうるさく言う必要が、これっぽっちもなくなる日が来るかもしれない\(^o^)/早くそうなってほしいなぁ〜♪

こうやってブログを書いていて、わたしみたいに英語がぜんぜん聞き取れなかったりしてると、知らないあいだに勘違いして、トリニのことを間違って伝えてしまう危険性が多々あると思います。言葉の間違いには気づきやすいけれど、じつは微妙に嫌がってることを気づかずにわたしが書いたりしてしまっていないか、つねに注意を払うようにしています。そして、間違ってることに気づいたら、すぐに訂正して、今わかってる範囲の最大限のことをなるべく歪めずに日本人にもわかりやすく伝えたい。それが、スティールパントリニダード・トバゴに関わって生きる、わたしの果たすべき責任だと感じています。